むかしから私はヘアースタイルにあまりこだわりがない。それで、できるだけお金をかけずに済ませようとしてるのだが、最近どうもうまくいかない。
ある日、散髪から帰ったら中2の娘が「パパ。髪切った?」と聞いてきた。私がうなずくと、 娘はすかさず「いくらで?」と聞いてきた。私が「1600円」というと、娘は「なるほどね」と納得したあと、「今度から3500円くらいのとこにしたらいいと思うよ」とニヤリと笑った。
次の日、学部長の山本彩先生から「髪切った?」と聞かれた。私が「娘には評判悪いんだよね」というと、山本先生は「だろうね、ドングリみたいだもん」と一刀両断した。そして、「でもマニアな人には受けるかもしれないから、いまの写真でブロマイドとか作ったら?」とアドバイスをくれたが、私は拒否した。
その夜、家族と食事をしている時に、高2の息子が私のヘアースタイルを笑いながら、近々ある高校のイベントで司会をするので自分も髪の毛を切りに行くという話をしていた。何かひっかかりを感じた私は「あまり安く済ませようとするな」と助言をした。
それから二日ほどして、息子が帰宅するなり、「や、やられたぁ」と部屋にこもってしまった。私は「どうした、大丈夫か?」と部屋をのぞいた。息子は布団にくるまりながら「俺もドングリになってしまった」とうめき声をあげている。見ると、眉毛の2センチくらい上で一直線にそろえられており、まさしくドングリのようになっていた。私が「い、いくらで切ってもらったんだ?」と聞くと、息子は「1600円」と答えた。カラオケ代を捻出するために節約したらしい。私の嫌な予感は的中した。私は「だから3500円渡されただろ」と苦い顔をした。
しかし、息子はタフだった。「でもいいや。俺、ドングリヘアーを流行らせるわ」とおもむろにギターを弾きはじめた。私はどうやって流行らせるんだろうと思ったが、とりあえず「頑張れよ」と応援することにした。大丈夫、髪の毛は一月したら伸びるから。